IT企業に務めて得たものと失ったもの

巷では残業時間が長すぎるなどと言われているIT業界ですが、それは紛れも無く真実であると私は考えています。実際に私が業界人として頑張っていた最中の記憶をたどってみると、残業した日のことばかりが頭をよぎるからです。

その一方で、大きな収穫もあったと断言できます。情報通信業で働くことの意味を見出せなかったり体力がなければ、この上なく過酷な労働環境であることに間違いはありません。しかしながら、私は人としても施術者としても成長することができる業界であると言い張ることができます。

IT土方と言われる仕事柄、帰りは午前様であることもしばしばでした。プロジェクトが佳境に入っているときには、会社や近くの宿泊施設で寝ることも珍しくはない状況です。さらに、入社したてのころは右も左もわからなかったが、今では難しい案件でも特に苦労することなく終わらせることが可能になっています。ここまでの道のりは平坦ではなかったものの、厳しい環境に部下を投じてくれた上司には深く感謝しています。

新卒採用されたばかりで、コーディングの力は充分に得られていなかったときのことです。直属の上司から言い渡された初仕事は、中堅の技術者でも四苦八苦するような開発案件でした。それを私を含めた新人二人とベテラン技術者一人の計三人で行うことになったので、メンバーの誰もが不安な気持ちを抱いていたと考えられます。ベテラン技術者は担当のコーディング作業を難なく終わらせて定時には退勤していましたが、私たち新人は毎日深夜まで作業し続けました。

プログラムを作っては上司から作り直しを命じられる日々が続き、身も心もボロボロになる寸前だったときに私は泣き言をつぶやいてしまいます。直属の上司に対して、IT業界の仕事がこれほどまでに辛いものだとは考えもしなかったことを悔やむ気持ちをぶつけました。ところが、上司は笑いながらあることを言ってのけます。

IT土方と言われる仕事柄、帰りは深夜になることが当然であるという内容でした。どんな技術者でも通る道なので、辛抱強く仕事に取り組むしかないとのメッセージが込められていたと考えられます。

誰かに叱咤激励されたわけではありませんが、私は業界人としてへこたれるわけにはいかないと奮起しました。その日を境に考えがクリアにまとまり出して、毎日深夜までかかっていた作業時間が徐々に短くなっていきました。気がつけばプロジェクトが無事に終わり、コーディングの力は充分に得られたと実感できるようになっていました。右も左もわからなかったが、今では高い技術力を有しているのは新人のころの経験が大きく影響しています。

結局のところ、自分の時間を失ったが将来に役立つスキルを磨くことにつながったと感じています。最近では教育機関から出張授業の依頼が舞い込んでくるようにもなったので、充実した日々を送ることができています。教え子たちにも、私の経験を話しつつ自分の時間を失ったが将来に役立つ知識や技術の習得につながったことを力説することが多いです。将来的に私の後輩もしくは部下になる可能性がある教え子たちなので、業界のことを知っておいてほしいからです。

まだまだ定時で退勤することが少ないので、一段とスキルアップを図る必要があると実感しています。しかしながら、長く仕事に取り組んだ分だけ能力が高くなっていくことを実感できています。今後の課題は社内のベテラン技術者と肩を並べることですが、それとともに健康管理に留意することも忘れてはなりません。体が元気でなければ頭脳労働の能率が著しく低下することを知っているので、食べるものや睡眠時間に注意しながら開発業務に従事していきたいです。

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